Layer… 『lain』と時制の混乱、時間の非実在性

『lain』作中においては、時制を意図的に混乱させた演出が散見される。5話での美香の精神錯乱のシーン、12話の玲音のセリフ「あったことも、なかったことにできるんだよ」、そしてアニメのオープニングのこのシーン。 (出典:リンク先 https://yamaki-nyx.h…

Layer… 『lain』のメインテーゼ

私は、『lain』はゲーム版、アニメ版ともにそのラストシーンで、今まで自明にしてきた存在の定義「存在は認識=意識の接続によって定義される」を完全に否定していると考えている。 ゲーム版のラストで玲音は自殺する。有限な肉体から解放されて本当の意味で…

Layer… 方針の転換

私は当初このブログでは『lain』各話の所見を述べるということを考えていたが、どうやらその目論見は空疎で意味のないものであったようだ。というのも、『lain』の思想は全て「存在は認識=意識の接続によって定義される」というあのテーゼに下支えされたも…

Layer:04 RELIGION ① 「ファントマ」から見える現代社会での監視のあり方その2

前の記事で、劇中の架空のゲーム「ファントマ」が象徴する現代の監視社会について少し触れたが、今回はその構図を近代のそれと対比させて少し考えてみる。 近代におけるパノプティコンは、規律・訓練された主体の形成を目的としていた。 これに対して現代の…

Layer:04 RELIGION ① 「ファントマ」から見える現代社会での監視のあり方その1

4話では、若者の間で流行しているとされるゲーム「ファントマ」のプレイヤーである名も無い少年が登場する。 (出典:リンク先 https://yamaki-nyx.hatenablog.com/entry/2018/06/04/151039) この人。 明らかに様子がおかしいが、これは本来ワイヤード中の…

Layer:03 PSYCHE

ある日、玲音が下校しようとすると、 自分の下駄箱の中に不審な封筒が一通。 中を開けてみると なにやら怪しげな部品。 (上の2枚の画像の出典:小中千昭氏のブログ「welcome back to wired」リンク先→ https://yamaki-nyx.hatenablog.com/entry/2018/05/29/…

Layer:02 GIRLS ③玲音とレインの乖離と邂逅

(注)今回の記事も一部ネタバレを含むので、あらかじめご了承ください。 2話の途中、学校で(玲音は14歳の中学2年生という設定になっている)友人たちが玲音に話しかける。昨日サイベリアで玲音そっくりの子がいた、と。 (出典:小中千昭氏のブログ「welco…

Layer:02 GIRLS ②REASON FOR EXISTENCE Ⅱ(補足)

注:今回の記事はネタバレを含むので、あらかじめご了承ください 前の記事でも紹介したように、『lain』作中では、存在は意識=認識の接続によって定義される。このことは、信仰という形で他者から認識される限り神はその存在を認められる、ということをも暗…

Layer:02 GIRLS ①REASON FOR EXISTENCE

さて本題に入ろう。 今回のテーマとして外せないものは、まずこれだと思う。1話のテーマとほぼ同じだが、この命題は『lain』全体を貫くメインテーゼなので、注意して見ていきたい。 wikipediaのページ『serial experiments lain』のあらすじ紹介にはこういう…

Layer:02 GIRLS ⓪ 『lain』を鑑賞する上で留意すべきこと

2話に関する話を始める前に、1話で指摘できなかったことをここで言っておきたい。 1話での玲音と自殺した少女との邂逅は、あくまでも玲音の主観世界の中で起こったことである。そしてここから先でも、『lain』で描かれることは、玲音の主観の影響を受ける。…

Layer:01 WEIRD ②『lain』における光と影の描写

1話に限らず、『lain』の中ではしばしば光と影の対照をはっきりさせたシーンが見受けられる。 1話の中では、例えばこれ。 光の部分が白く映えているのに対して、影の部分からは何やら不穏な空気が感じられる。この点については、『lain』のシナリオを担当さ…

Layer:01 WEIRD ① CONNECTION,COMMUNICATION

・「つながる」 物語の冒頭、一人の女の子がビルの屋上から飛び降り自殺する。 この子。 彼女は死の間際、こう呟く。 「わたしは、こんなところにいなくてもいいの」 「こんなところにいたら、いつまでもつながることなんて-」 そんな彼女と同じ中学校に通…

はじめに serial experiments lainについて

serial experiments lain。このアニメ、およびゲームについて知っているという人はかなり限られているだろう。(上の写真はアニメ版のDVDのパッケージ)実際、必ずしも佳作とは言い難い面もあり、万人に薦められる作品ではないのは確かである。 しかし、私は…

「ラリっている」

私という感覚ーある意味での「意識」ーは幻覚のようなものなのではないか。幼少期に言葉という劇薬を大量に服用することによって生じる、かなり多くの人が罹患している中毒症状なのではないか。そんなことを思う日がある。

私とRicLylic

私は、私自身のことは書けない。 私が書けるのは、言葉の世界から立ち上がった「私に似たもの」についてのことだけ。 私たちはいつも、多層的な現実の層の間を往還しながら生活している。SNS空間、職場や学校、あるいは家庭とか、そういういろんな世界の中で…

私は立っている。 一本の綱の上に。 依って立つには余りにも細い綱の上に。 その綱の、 右には生が、左には死が見えている。 どちらへ落ちても、その落ちた先で私はまた新しい綱の上に立ち上がる。 立っては落ちて、落ちては立って。 生きているときも死んで…

息をするように。

書くことは自分を削ることだと思う。 知識をためることが自分を大きくすることだとすれば、ちょうどその逆の行為。 肥大化した自意識を、一旦バラバラにして紙に無理矢理「押し付けてみる」。 そうやって自分の姿を客体として見ることをしないでいると、今の…