Layer… 『lain』と時制の混乱、時間の非実在性

lain』作中においては、時制を意図的に混乱させた演出が散見される。5話での美香の精神錯乱のシーン、12話の玲音のセリフ「あったことも、なかったことにできるんだよ」、そしてアニメのオープニングのこのシーン。

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(出典:リンク先

https://yamaki-nyx.hatenablog.com/entry/2018/07/14/015812

風で飛ばされた玲音のキャップが空中に静止し、玲音は止まった世界を飛んでいく鴉に目をやって、独り立ち去っていく。

これらの例からわかるように、『lain』では時間は非線形なものとして扱われている。否、それはもはや時間とすら呼べない。時間という概念は自ずから過去ー現在ー未来という図式を規定する。つまり時間は、線形でなくてはならないのだ。従って、時間の非線形性という問題は、時間の非実在性の問題と換言できる。これについては、イギリスの哲学者マクタガートが1世紀以上前にその正しさを証明している。そして彼のその時間に関する言説は、現在においてもなお一定の説得力を保持し続けている。このことを深く考えたい方は、『時間の非実在性』(講談社学術文庫、2017、ジョン=エリス=マクタガート著、永井均 訳)を読むといいと思う。