Layer:01 WEIRD ②『lain』における光と影の描写

1話に限らず、『lain』の中ではしばしば光と影の対照をはっきりさせたシーンが見受けられる。

1話の中では、例えばこれ。

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光の部分が白く映えているのに対して、影の部分からは何やら不穏な空気が感じられる。この点については、『lain』のシナリオを担当された小中千昭氏のブログ「welcome back to weird」で言及されていることを参考にした。もし気になれば、参照していただきたい。リンクは

https://yamaki-nyx.hatenablog.com/entry/2018/05/20/214103

 

このような『lain』における光と影の描写について、私は、光の部分がリアルワールドを、影の部分がワイヤードをそれぞれ象徴していると考えている。

 

まず、この描写が意図的なものであることは上の画像からもお分かりになると思う。ただの風景として描くなら、こんな面倒なことはしない。

ではなぜこの影がワイヤードの象徴と考えられるのか。

このシーンを見て欲しい。

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分かりづらいが、画面真ん中のやや左寄りに立っているのが、本作の主人公の玲音である。

このシーンは、冒頭で自殺したあの少女が、玲音の主観世界に現れて、玲音に対してワイヤードに早く来るように誘った直後、その少女が消えて玲音が一人残る、という場面である。

くどいようだが、少女はすでにリアルワールドにはいない。であれば、その少女と交流ができるのは、ワイヤード上においてのみである。つまり、ここに描写された玲音の主観世界は、すなわちワイヤードであると考えられる。そして玲音がそのシーンで立っているのは、異様に拡大している影の上である。とすると、「ワイヤード=今玲音がいる場所=影」という風に解釈できるのではないかと思う。

そう考えると、この影に映った無数の白い点は、ワイヤード(現実の世界で言えばワールドワイドウェブに近い)上で繋げられた端末の集まりを示唆しているように思える。

このように、『lain』ではリアルワールドとワイヤードとの対照を、背景のコントラストを利用して表現していると思われる。話の推移を、影の描かれ方の変化と対応させてみても面白いかもしれない。